解決事例
横浜相続放棄相談センターの解決事例
解決事例①「請求書が届いてから三ヶ月が経過した放棄」
■依頼者の状況
幼少の頃両親が離婚。以来父親とは何の連絡も互いにせず現在に至る。
突然福祉事務所より父親が亡くなったとの知らせが入る。
その後何事も無く1年ほど過ぎたある日何通かカード会社からの郵便物が届いていたが、開封せず放置していた。その後、法律事務所から郵便物が届いたので驚き開封したところ、父親に借金があったこと、その借金を支払うよう求めるものでした。先に届いた郵便を確認したところ父の借金を相続したので支払を求めるものでした。届いて既に3ヶ月を過ぎていた。
亡くなってから1年経過しており、しかも借金の請求が届いてから3ヶ月過ぎてしまっていたのでもう相続放棄できないのでは当センターに相談された次第です。
■司法書士の提案&お手伝い
最初に届いた郵便物を放置していたことをどう判断するか。
民法97条1項には「隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」とあり気になります。最高裁判決でも「到達とは意思表示を記載した書面が相手方によって直接受領され、又は了知されることを要するものではなく、これが相手方に了知可能な状態に置かれることをもって足りる云々」(最高裁判所判例平成10年6月11日民集52・4・1034)とありこの判例に従えば郵便物が届けられていた時点で到達があったとされたとえ開封せず内容を知らなくても相続債権者からの催告は到達していると認められその到達から3ヶ月を過ぎたことになります。
これだともう相続放棄は出来ないのではないかとも一見おもわれます。しかし最高裁昭和59年4月27日判決によれば、民法915条1項所定の熟慮期間について、相続人が相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から起算すべきであるとし、例外として相続人がそれらの事実を知った場合であっても、3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄しなかったのが被相続人に全く相続財産が存在しないと信じたためであり、相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状況その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な状況であって、相続人において上記のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時または通常しうべかりし時から起算するのが相当である。と判示した。
この判例の例外として認められている条件が本件にも当てはまるのではないかと判断して家庭裁判所に事実を詳細に説明しました。
■結果
無事相続放棄が受理されました。
解決事例②「16人の親族全員を期限内に放棄」
■依頼者の状況
母親が借金を残して他界。自身の相続放棄を含め、次の相続人の順位にあたる母親の兄弟姉妹に借金の督促がいくのを防ぎたい。
■司法書士の提案&お手伝い
司法書士より被相続人の兄弟姉妹及び亡くなられている場合はその子供へ連絡。
全部で16人に相続放棄の説明及び提案。無事全員に承諾を得られ実務に着手。
■結果
全員三か月以内の放棄が完了することが出来ました。
解決事例③13年前に亡くなった親の相続放棄
■依頼者の状況
13年前に亡くなった父親の相続放棄をしたいとのご依頼を受けたので事情を聴きますと当時父親は持ち家に住んでおり、借金の催促が最近来たわけでもないということでした。最近になり実家の兄より敷地が父名義のままだったので名義変更に協力するように求められたということでした。父に財産(土地)があったことを知っており、多額の借金があることを知らず最近請求が来たということでもないので、例外的に相続放棄が認められるケースに該当せず相続放棄は難しいのではと思いました。
遺産分割に応じても特に問題ないのではと申し上げたのですが当人は相続放棄をしたいという希望でした。
■司法書士の提案&お手伝い
判例等色々と事例がないか調べてみると以下のような事例がありました。
「被相続人が死亡した時点で、その事実及び被相続人の相続人であることを知ったが、被相続人に公正証書遺言があるため、自らは被相続人の積極及び消極の財産を全く承継することがないと信じていたものであるところ 途中省略 同相続人においては被相続人の相続開始後所定の熟慮期間内に単純もしくは限定承認または放棄のいずれかを選択することはおよそ期待できなかったものであり、被相続人の死亡の事実を知ったことによっては、未だ自己のために相続があったことを知ったとはいえないというべきである。」
(東京高決平成12.12.7)
このケースに沿って必要な事実を詳細にアドバイスさせていただき家庭裁判所へ照会に対する回答書を提出しました。
■結果
無事相続放棄が受理されました。